だいぶまえの年始3

~だいぶまえの年始3~

高速でさっとセントレアに行ってしまうのもなんだか気が向かず、下道で車を走らせ、途中新舞子へ寄ってみた。
ファインブリッジからの眺めは、いつもよりもウィンドサーフィンの数が多く、低く下がってきた日の光が、彼らをまばゆく照らしている。
そして、それをiPadで撮影する妻。
何かから抜け出てきた休憩場所にいる自分を実感してほっとする。
きっと自分は今、幸せの中にいる。
こんな時には、なおさらそんな事を強く感じる。

新舞子から、そのまま海沿いを走ると、意外な程早く空港島へと続く道に入ることができたので、カフェによってお腹を膨らましたあと空港へ。
二週間前に来た場所に、また来るとは思わなかったが、連続で来ると物足りない部分にも気付く。
空港の施設以外に、行くところがないので、ブラブラしても2、3時間で終わってしまう。
以前にイオンが出店する噂があったが、今のところ実現していないと言うことは、採算が見込めないほど、この場所の将来性が不透明なんだろうか。
そんな、りんくうエリアについて、二人で考えていると、次第に帰るのが億劫になり、意外と安い近所の東横へ泊まることにした。
ここは宿泊すると、一週間ほど駐車場が利用できるらしく、ここで一泊して朝の便に乗り、帰りも車で帰るという選択肢があるという事を知った。
泊まりになった事で、ハワイアンカフェでビールを飲んで過ごしていると、またしても自分が幸福のなかにいることを実感すると同時に、彼の事を思い出して、ありがたいような、悔しいような、申し訳ないような気分になり、また少し涙腺が潤んだ。
生きていること自体がとてつもない幸福で、それ以外は些細なことなのに、日常は些細なことで埋もれている。
この幸せが続きますようにと思いながら、いやそうではなくて、今幸せのなかにいる事を味わうべきなのか。
未来を願う前に今を思う。
今を思う繰り返しが未来。
双方向のようで一方通行なのか。
思いは巡り、時は漂う。
はちきれそうなお腹を抱えながら歩く空港周りの静けさは、そんなやりどころのない気持ちを、置きっぱなしにするのにちょうどいい大きさだった。
頭の片隅に、明日のお通夜の事を時折ちらつかせながら、とりあえず今日は目を閉じることにした。
おやすみなさい。