まえがきのまえがき~だいぶまえのことみ~

~だいぶまえのことみ~

一日なにもしない。
ただひたすら青い海を眺める一日。
時々散歩したり、キスしたり、そんなのでいい。
ただそこにいることを実感したい。
客先へ向かう途中の電車の中で、一瞬波の音を感じて、窓の外に目をやった。
見えるのは古びて周囲と溶け合った団地と工場。
誰が誰だとか、私が私であるとか、そういう事がどうでもいい時がある。
誰でなくてもいい時間が欲しいと思うことがある。