まえがきのまえがき~だいぶまえの沖縄⑥~

~だいぶまえの沖縄⑥沖縄の夜~

夕暮れにまどろむ一方で、そろそろチェックインの時間が気になり出した。
一応、島の外周を一周して元の古宇利大橋に戻り、今夜の宿を目指す。
ナビを見ると、パイナップル園の方まで58号で戻るルートよりも、手前のルートを示している。
思ったより時間もかかりそうだと気がついて、とりあえず宿に電話をかけておいた。
夕飯がなくてよかった。

途中、山に囲まれた場所で車を停めて空を見上げると、星が綺麗だった。
沖縄にも森があって、暗くてなにもない夜があるという当たり前の事を、3日目にしてようやく実感。

ナビに従って、ようやく宿の近くまでやって来たが、入口がどう考えても森の奥へと下っていく道。
本当にこの道でいいのか?
ジェイソンでも出てくるんじゃないか、という不安にかられながら道を下っていくと、今度は海際の細い砂利道が心許なく先の方へ伸びている。
探り探り進んでいくと、道路の果てに2階建てくらいの建物が見えてきた。
一応ここらしい。
バカンスという雰囲気では無さそうだ。

修行?
研修?
中に入ってみて部屋に案内されると、その雰囲気を理解した。
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キャンプ場?
小学校の時の六所山のキャンプ場を思い出される。
部屋の中に二段ベッドが2つ。
布団が何となくべたべたしている。
そしてなんとなく妻の気分をうかがってしまう。
一抹の不安を感じながら、20:00からのナイトツアーの為に、集合場所に向かう。
案内をしてくれる「なりさん」は、どことなく低いテンションで事前説明をしてくれる。
ルーティン化し過ぎてテンションが上がらない感じを受けてしまい、期待感は上がらない。
4家族くらいでワゴンに乗ると、さっき不安な気持ちで通り抜けた森のあたりで車を降りた。
どうやら土ボタルを見るらしい。
ジェイソンじゃなかった。
土ボタルの解説を聞いているうちに、段々と森を感じる自分の心が落ち着き始めた。
これは楽しんだ方がいいのかもしれない。
土ボタルの方は、昨夜の雨の影響か結局一匹しか見られなかったが、そのあとドラゴンフルーツ畑を見たりして、終わった頃には満足感が残っていた。

宿に戻ると、レクリエーションルームのような部屋で、三線の練習体験をやっていて妻が飛びついた。
四、五、六みたいな独特な楽譜を見ながら、確かめるように弦を爪弾いていく。
もどかしさと微妙な達成感が無心を作り出す。
んー、悪くないかも。

ほどほどに疲れたところで部屋に戻ると、部屋の壁にアリ達が上がり込んでいる。
どうやら、ゴミ箱に捨てたグアバの香りに誘い出されたようだ。
んー、やはりキャンプだ。
キャンプのような少し気の抜けない気分でベッドに入ると、布団は相変わらずべたべたしていたが、寝てしまえば、それはどんな夜も同じだった。