まえがきのまえがき~だいぶまえの沖縄③~

~だいぶまえの沖縄③市場とナーベラー~

沖縄二日目の朝。
今回の旅は時間がおしいので、少しでも早起きしようという事で二人の意見が一致。
7時前にバイキングへ向かう。
今後の食事を考えて、二人ともここではセーブ気味に朝食をすまし、チェックアウトの時間まで市場に行くことにした。
連休が明日からということもあってか、歩くのも苦労するほどの人はいない。
お店の方は、夕べよりも開いていて、まずは牧志公設市場へ。
豚の肉や面の皮、そして頭が丸ごと置いてある。
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豚に限らず普段何気なく食べている動物達の頭は、すべからくこういう状態になっているのだが、間近で見るとやはりそれはそれで罪悪感が生まれる。
そこにサングラスや花飾りをつけて、サービス精神旺盛のお茶目なお兄さんに写真を撮ってもらっても、何%か間引きされた楽しさがそこにはある。
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市場を2階に上がると、妻の目的のサーターアンダギー屋「渉」に到着。
が、開店が10:00からだったので出直すことにして、再びアーケード街へ。
次は農連市場というさらに奥にある昔ながらの市場へ向かう。
夕べのタクシーの話では、そこは朝の4時くらいからやっている朝市で、近くのお店が仕入れに来るようなところらしい。
近づくにつれ、アーケード街の外向きの空気から、地元の生活感ある空気が漂いは始める。
アジアのどこか小さな港町に迷い込んだ感じだ。
その先に古びた木造風の市場があり、中ではバザーのように地べたに野菜を広げたおばさん達が、一仕事終えたあとなのか、ずっとこの調子なのかわからないゆるさで、おしゃべりをしている。
人の数はまばらだ。
旅もまだ二日目なので、取り立て買う野菜も思い当たらずブラついていると、南口のお店で、妻が猫がきっかけでお店のご主人に話しかけられた。
その間に自分もお店の奥さんに話しかけられ、最近の人はヘチマを食べないとか、世代の移り変わりを、何十年もここで生きてきた人生とあわせて語ってくれた。
市場の変化で、この市場の活気もずいぶん落ち込み、この店も来年にはたたむかもしれないと言っていた。
ツアーやガイドブックではわからない話だ。
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別れ際に柿の種をもらって、おじいとおばあと猫のいるお店を後にした一行は、話の中に出たヘチマ(ナーベラー)の食べられる店を探すことに。
といっても、食堂らしきものが見当たらない。
妻が物売りのおばあにナーベラーの食べられる場所がないかと尋ねると、おばあは近くにいた知り合いに尋ね、結論として隣にある、雑居ビルの工事関係者出入口のようなドアを指差した。
「ここで食べられるよ。」
ここが食堂?
一瞬ソウルのタプコル公園に行ったときの感覚がよぎる。
中の見えない引き戸を開けて中に入ると、細長い小さな部屋を二分して、左にキッチン、右にカウンターと、 なんとか食堂の形を保っている。
どうやら本当にここらしい。
この中でおばちゃんが、この市場や近所の常連さん相手に一人で切り盛りしていた。
3人くらいしか座れないカウンターで、ナーベラー料理を注文して、おばさんの仕事ぶりを眺める。
手慣れた動作で、次々と注文をこなしていく姿が楽しい。
そしてついにナーベラー炒めが登場。
うまい。
とろける。
ヘチマのイメージとはまったくかけ離れた食感に二人とも見合わせて握手。
絡めた味噌との相性が抜群だ。
朝食を食べていなければ、ご飯も頼んでいただろう。
ナーベラー侮れん。
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少し仕事が落ち着いたおばさんと話していると、息子さんが名古屋にいる事、そしておばさんからも、最近の人はナーベラーを食べないという話ができた。
こんなに美味しいのに?
ナーベラーの美味しさを知ってしまった二人には理解しがたい話だ。

ナーベラーの満足感まま、農連市場を一旦離れて、チェックアウトをするためにホテルへ戻ると、レンタカーで牧志市場に近い駐車場に停め、再び「渉」へ。
あっけなく目的のサーターアンダギーを手に入れると、また農連市場へ戻る。
取り立て買う野菜がないと思っていた市場で、妻は早速ナーベラーを買い込んでいた。