まえがきのまえがき~だいぶまえのエイサー~

~だいぶまえのエイサー~

豊田エイサー祭を見に、豊田スタジアムへ。
今年で30年目で、かつては自分の地元の中学の近くでやっていたらしいが、中学生の時にそんな祭は聞いたことがなかった。
愛知県内に、こんなにエイサー団がいることにも驚いたが、その集まりの良さと、客席でも踊り出すような雰囲気が、地元の祭とは違う高揚感があって楽しい。

祭は日の照りつける午後一時頃から始まり、途中、日のあたり過ぎで、のぼせそうになってスタジアムの観客席で涼む事にした。
スタジアムを抜けていく風が心地よくて、ウトウトしてくる。
妻に電話で呼び戻されて、また演舞を見ていると、次第に日は傾き始め、会場は夕日にさらされて、前半とはうって変わった雰囲気を醸し出している。
沈んでいくオレンジか、心に涼しい。
ないだ心を、エイサーの太鼓の音が駆け抜けていく。
きびきびとメリハリのきいた太鼓の動きや、水の中の魚のようにしなやかな踊り子の手先を眺めていると、無心が生まれてきた。
無心の動きは、見るものも無心にさせる。
人は本来、無心な生き物だったかもしれないと思いながら、僕らは、その心の始まりを思い出せないでいる。
時折感じることはできるのに。