まえがきのまえがき~だいぶまえの夏の終わり~

~だいぶまえの夏の終わり~

リビングの低いテーブルでは腰が痛くなるので、キッチンで写真集を読んでいる。
わずかに北から南へ流れてゆく風を感じると、その向こうに幾つかの虫の音が聴こえた。
秋はもう始まっているのかと問うと、涼しくなったらか鳴いているのさと言われた。
写真集の中に出てくる、チリの鮮やかな山景と乾いた秋風が、背中をなぜる風とシンクロして、何かが抜けてゆくのを感じる。
秋はもう背中まで来ている気がした。