いつかの那覇ぶら1
〜いつかの那覇ぶら1〜
名古屋は雨、そして那覇もどうやら雨らしい。
週間天気予報で一週間前に見た時は、晴れマークが中心だったのに。
日に日に雨マークが増えていくに従って、なんだかこの旅が歓迎されていない気がして、気持ちが不貞腐れている。
今日が出発だというのに、まだ現実感がない。
仕事先からのメールは他の人に対応してもらい、打合せは帰ってからになったのに、何かやり残してる気分が消えない。
じゃあ、あと何が揃ったら、行ってもいいと思えるのだろうか。
車窓の向こうのどんよりとした空を見ていると、ただ自分が呼び込んでいるだけじゃないのかと思えてきた。
空港に着いて、手続きを済ますと、時間まで一服する場所を妻と探す。
あれ?
お気に入りだったハワイアンカフェがなくなっている。
がっくりしているところに、足元に揺れを感じる。
地震だ。
どこまで畳み掛けるんだ。
そんな気持ちを知ってか知らずか、
妻が、この旅をどんな旅にするか、
それを口に出して言ってみてと聞いてくる。
ここまでくると逆に開き直ってきて、素直にこの旅を楽しむと宣言してみた。
よくわからんが、なんだか効いてる気もする。
そもそも、歓迎されてない旅なら、仕事が急に入るし、地震で飛行機は飛ばない。
不安に構わず、この旅を楽しもう。
そうする事にした。
保安検査所で、妻とはお別れ。
二ヶ月前、ブータンへ出発する妻を送り出した場所で、今度は反対の場所にいる。
何故だか、送り出される方が、ほんのり切ない。
苦手な離陸の瞬間も、今回は一人。
雨のセントレア。
緊張の離陸から雨雲を抜けると、そこは光る雲海だった。
雲の上は、いつだって晴れている。
それは魂のあり方のようだ。
雲海が地上のように見える高さに来ると、また薄い雲が現れる。
雲の御簾のくぐると、ゆっくりと思い出すように、世界の美しさが広がっていった。