いつかのトークイベント
〜いつかのトークイベント〜
ギリギリの出発で駅へ向かい、バス乗り場に行くと、1ヶ月間違えて予約している事がわかり、大急ぎで別のバスを探す。
新幹線も考えたが、JRバスに空きがあり、何とか12時過ぎに東京へ到着した。
トークイベントは、渋谷で2時からなので、駅ビルのタイ料理屋でお昼もそこそこに、渋谷へ向かった。
東京訪問としては珍しく雨で、しっとりとした東京も少し新鮮に感じたが、渋谷に着くと人と傘の混雑ぶり巻き込まれて、そんな気分も何処かへ消えた。
坂の多さに東京を感じながら、10分程で会場となる渋谷のモンベルへ到着。
エレベーターで4Fに上がると、受付で本を購入。
数十人規模の会場の中を見渡すと、NTさんらしき人を発見。
思ったより大きい。
そして、テンションが高い。
写真をやっていた学生時代の後輩を少し思い出した。
ようやくイメージと現実の間が埋まり、得体の知れない緊張感が、胸の底からグラグラと湧いてきた。
そして少しそわそわした気分のまま、トークイベントが開催した。
Mさんの分かりやすいトーク。
Nさんの滔々と自己表現をするトーク。
NTさんのサービス精神旺盛なトーク。
Yさんの編集部ならではのトーク。
そして一番若く、直向きに彷徨うSさんのトーク。
五人五様のブータンが語られる事で、行ったことのない国が、立体的に浮かび上がってくる。
写真家は、ただ写真を撮るだけではなく、
その背景をしっかりと取り込む事で、それが写真に表れているという事を思い知る時間になった。
その後の懇親会で、参加者やNTさんと話している中でも、ずっと自分が何者なんだろうという問いかけが、表に出てきた。
歌う事?
glee?
とれとも結局、今の仕事なのか。
書いていて楽しいのはgleeだが、それがどうなるかもわからない。
自分が言葉の住人である事は、意識しているが、それが持っている力の大きさは、とても脆く、小さく感じる事がある。
今抱えている日々のもどかしさに、その言葉が寄り添えるのは、ほんのひと時だけだ。
でもそうした自問自答から動き出すか、そのままでいるか、という大きな振り子が動き出した事は、それはもう、そういうタイミングだと、自分の心は知っているのだと思う。
進めないのは、そこに恐れがあるからだ。
その振り子の動く音が耳をよぎる度に、静かな緊張感が走る。
翌日、ワールドツーリズムのイベントに行き、世界への意識が広がる一方で、心は極小の芯へ向かう感覚を示した。
その大きな隔たりに戸惑いながら、それは次第に、大きな海と船になり、僕はそれを上から眺めている。