浄夜6
浄夜6
開演時間の18:30を過ぎても、はじまる気配がない。
ステージの上のピアノやイラストが、BGMの向こうで静かに佇んでいる。
やがて来る時間に備えて、付箋とペンを手に用意した。
ライブでこんな事をするのは初めてだ。
ライブに集中できないかもしれないけれど、記憶だけでなく、そこから込み上げる言葉があれば何か残しておきたい、そういう思いがいま沸き上がっている。
少し遅れて新良さんが登場。
演奏場所の脇に、静かに飲み物を置き、軽く氷を鳴らした。
サトウさんはまだ現れない。
三線の調律を始めるように、新良さんが音を鳴らし始めると、そのまま歌が始まった。
サキシマミーティング以来の生歌を聴いて、一気に感覚が開いた。
新良さんの歌と三線を聴いていると、自分が何処にいるのかわからなくなる。
海や月、風、自然の記憶の中に連れてこられたような感覚だ。
歌い終わると、
「前座の新良幸人と申します。」
という自己紹介で会場をほぐし、夜っぽいけど昼の歌という「月が浜」を続けて歌う。
第一声から違う。
本当に上手い歌い手の凄みを感じていると、サトウさんが登場。
客席のお客さんはお酒は飲めず、ソフトドリンクのみという事で、ステージの二人がみんなを代表して飲んでいるという名目で、二人が乾杯。
昨年の10月以来の人前でのライブという事で、サトウさんは、とても緊張をしていると語ったが、今日ここで演奏できる喜びが感じられた。
公演スケジュールが解除や延期になりやすい状況下で、今日この日のステージと客席に集まれた感謝と喜びが、会場内に立ち込めてきて、ゆっくりと浄夜は始まった。