浄夜5

浄夜5

桜坂劇場は、思っていた通りのレトロな時代感やアングラ感を持ちながらも、やちむんや布など沖縄文化を取り扱ったショプやカフェが混在していて、思ったよりお洒落な雰囲気を醸し出していた。

妻がチケットを予約してくれたので、浄夜の受付に行ってみると、チケットの受け取りは奥の劇場の受付の方だと教えてくれた。

「もしかして、今日、奥様は名古屋でオンラインでご覧になる方ですか。」

と女性のスタッフから声を掛けられた。

「え、なぜそれを?」

どうやら、妻の電話予約に対応してくれた方だったようで、そのやりとりをちゃんと覚えていてくれたみたいだ。

今回は席が完売になったあと、劇場の方の取り計らいで、数席だけ追加してくれた事を教えてくれた。

「おかげで、今日ここに来ることができました。」

お礼を伝えると、なんだかじんわりと温かいものが湧いてきた。

開演が近づくにつれて、お客さんが集まってきたが、浄夜の受付の方々とお客さんとの距離が近く、誰か知り合いの公演でも見に来たような、アットホームな空気が流れている。

こんな柔和な待ち時間は、初めてかもしれない。

ゆったりと、館内の上映案内を眺めていると、いつのまにか他のお客さんが開場に向けて並び出している。

出遅れてはなるまいと、列の後ろを探すと、最後尾は既に建物の向かいの公園まで伸びていた。

既に出遅れているではないか。

まあ、でもゆっくり行こう。

よんなーよんなー。